ほんまに「おいしい」って何やろ? その2
まずこの方の料理人になる経緯が実に面白い。
料理人の方の自伝というのを見たことも
読んだこともないですからね。
昔大人気だった「料理の鉄人」の道場六三郎さんや
鉄人酒井シェフがどんな修行をされたかなんて
誰も知らないですからね。
まずこの方は冒頭ご紹介した通り、
京都の老舗料亭「菊乃井」の三代目です。
当然物心ついたときから、
「お前が後継ぎやからな」
と育ちました。
大学は立命館に行かれています。
今どきの料亭の後継ぎは大学くらいでていないと
いけないのでしょう。
大学4年生のときに
「フランス行ってフランス料理の料理人に
なろう!」
そう決意して渡仏してしまうのですね。
でも当時(1972年・昭和47年)では
日本で言うフランス料理は要するに「洋食」
なのですね。
「エビフライ」などアレです。
しかしそれを食べたことはあっても
作ったことないのでしょう。
しかも「英語もろくにしゃべれない」
それでフランスに行ってしまったのですね。
21歳の時です。
まあこんな若者そうそういないでしょう。
働く先どころか泊まるあてもない・・・。
「ベンチャースピリッツ」を感じますね。
ただやっかみを込めていいますが、
老舗のボンボンですから、お金はいくらでも
あったのでしょう・・・。
ここでフランス料理を勉強しに鹿児島から来た
というある日本人に出会います。
この記述が一番面白かった。
「毎日雇ってくれるところを探している」
という。
どうやって探すかというと
「狙いを定めたレストランにいくと、
裏口から回って自前のコックコートを
着て勝手に皿洗いを始める」
のですね。
当然
「お前、うちのスタッフじゃないようだが、
誰や?」
となる訳で、そこで覚えたてのフランス語で
「雇ってくれ」
と。でも当然断られるので
「せめて賄いだけでも食べさせてくれ」
それで賄いを食べ終わると
「賄いだけでいいから夜まで働かせてくれ」
そうやって必死に働くと、
「うちは一杯だけど他の店を紹介してやる」
と言われることもあるのだそうです。
それを繰り返しながら修行した・・・。
これこそが「紹介状なしの飛び込み料理人の修行」
これが現在日本を代表するでフレンチ・シェフの一人と
なった上柿元勝さんの若き日の姿。
何だかこの記述だけで感動しました。
ここ読んで、日本で代表する料理人となりたい方は
「菊乃井」の裏口から入って
勝手に皿洗いしいたらいい。
「先生の本を読みました。
賄いだけでいいから
ぜひ働かせてください!」
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