日本製鉄の転生 巨艦はいかに蘇ったか その3
「値上げ無くして供給なし」
この章はぜひ繰り返し読んでいただきたい
ところです。
愛知県東海市にある自動車用鋼板の供給拠点である
「名古屋製鉄所」
ここはすぐ想像できるでしょうけど、あのトヨタ自動車に
対しておよそ30年供給してきた製鉄所です。
顧客からの要求が最も高い自動車鋼板で
それに応えるべく
「超ハイテン(高張力鋼)という高付加価値品」を
作ってトヨタに供給してきたのです。
しかし、「長年作っても作っても赤字」だったそうです。
それはどうしてでしょうか?
理由は販売価格があまりにも安かったからです。
「あの日本製鉄もそうだったのか・・・」
そう思いませんか?
価格交渉で永年押し切られていたのだそうです。
何故なら、今までの経営者が「数量を争うシェア争い」に
明け暮れていたためです。
「安値は企業価値を下げる自殺行為」
橋本社長ははっきり言って営業部隊を
叱咤激励します。
ここは学んでいただきたいですね。
売上が欲しいばかりに安値で売ってしまう
経営者は多いですからね。
ましてや「シェア」という金科玉条のまやかしの言葉に
皆弱いのです。
「なぜ、我々にとって値上げが必要なのか。
顧客と対峙して説明し納得させられなければ、
営業とは言えない」
「値上げで取引数量を減らされてシェアを奪われるくらいなら、
それはそれで構わない」。
どうでしょうか。
こうハッキリ言える経営者は少ないと思います。
数字でハッキリ説明されています。
21年度の上期の日本製鉄の平均鋼材価格は
1トン当たり10万7000円。
それが22年度には14万9000円へ。
なんと27%も上がっています。
この表見ると驚くのですが、市況は逆の値動きなのです。
またこれもさらに驚くのですが、
それまで自動車大手との価格は「後決め」
だったそうです。
つまり、価格が決まっていないのに出荷するという
異例の力関係だったのです。
これでは収益管理なんかできっこないですよね。
それを21年に「先決め」へと変更したのです。
「値決めの主導権を握る」橋本社長は、
日本製鉄の歴代トップが成しえなかった改革を
やり遂げたのです・・・。
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