エッシェンシャル思考 その5
「選択」ということをご紹介しましたが、
次に非常に勉強なったことは、この選択と同時に
「何かを選ぶということは何かを捨てること」
つまり「トレードオフ」という考え方なのですね。
こういう発想を持つことこそが、エッセンシャル思考なのですね。
この「トレードオフ」ができない経営者は多いそうです。
私自身もここは繰り返し読みました。
なかなか理解しにくいでしょうか。
こんな例が出ていました。
「われわれは情熱、イノベーション、実行力、リーダーシップを
大切にします」
こういうことを目標にあげる企業経営者は多いそうです。
「聞こえのいい言葉だが、これらを大切にしない企業は
どこにもないし、羅列されているだけで優先順位が
まったく分からない」というのです。
これとよく似た例で
「顧客、従業員、株主の皆様をもっとも大切に考えます」
これもよくある例ですが、「みんなを優先するのは誰も優先しないのと
同じ」と手厳しいです。
これではいざというときに顧客と従業員のどちらを大切にするのか
それが見えてこないというのです。
決定的な例が出ていました。
日本でも医療用機器や医薬品などを展開している
ジョンソン・エンド・ジョンソンです。
1982年に「タイレノール事件」を起こしました。
解熱鎮痛剤(タイレノール)はジョンソン・エンド・ジョンソン社の
当時の圧倒的な売上を誇る看板商品でした。
しかしそのタイレノールを服用した人が相次いで亡くなったのです。
この時、同社はどう対応したのでしょう。
いろいろ選択肢がありますね。
① タイレノールをすべて回収し顧客の安全を図るべきでしょうか?
② それとも株価を守るために、安全性のアピールに徹するべきでしょうか?
③ 被害者の遺族に対する謝罪と補償を真っ先に行うべきでしょうか?
ジョンソン・エンド・ジョンソン社の社長になったつもりで
考えてみてください。
「顧客、従業員、株主の皆様をもっとも大切に考えます」
なんて悠長なことは言っていられないのです。
ただ、ここでジョンソン・エンド・ジョンソン社には
頼るべき指針があったのです。
創業者ロバート・ウッド・ジョンソンが記した
「我が信条」(Our Credo)という社訓です。こちら
そこには優先順位がはっきり示されていたのです。
顧客が第一で、株主は最後だったのです。
この信条にもとづき、同社はすみやかにタイレノールの
回収を決定ました。
どれほどの損失がでようとも構わなかったのです。
実際にその損失額は1億ドルにも上ったと言われています。
顧客の命と1億ドル。
経営者にとってはタフな決断だったでしょう。
顧客が最優先だと分かっていたから
トレードオフが引き受けられたのです。
因みに、タイレノールを服用した人が相次いで
亡くなった理由は、何者かが瓶に毒物を混入したことが
後の調査で分かったそうです。
結果から見たら1億ドルの損失を計上したことで
それ以上の信用を得たといえるでしょう。
このタイレノール事件は、ネットで検索するとすぐ出てきます。
「ビジネス史上最も優れた危機対応」
とされています。
タイレノール事件はトレードオフの考え方が良く分かる事例です。
ぜひ参考にしてください。
経営者にとっては、瞬時にトレードオフの決断を迫られる場面は
往々にしてあるからです。
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