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2022年1月 7日 (金)

「相続対策で家族信託を利用 母親の受託者として財産管理」

(NICHIZEI journal online 2021年12月25日 掲載記事より)

こちら



吉田 信康 税理士

 

吉田信康税理士は2021年4月、母親の財産管理を目的とした

家族信託の利用を開始した。実際に受託者となった心境や、

相続対策における家族信託の必要性などについて話を聞いた。

 



――家族信託を活用しようと思ったキッカケを教えてください。


 私は三人兄弟の三男で、父は他界しており、母は93歳で施設に入っています。

  都内の実家は築50年以上の古い建物で、母の財産はこの建物くらいですが、

  土地は借地権のため、相続が発生しても簡単に売却できるわけではありません。

  とはいえ、借地権の土地でも、都心であれば相続税がそれなりにかかってきます。

  今のところ母は元気でしっかりしていますが、この先、認知症になってしまうことも

  考えられますので、相続対策をいろいろと検討した結果、私が母の受託者となって

  老朽化した実家をアパートに建て替え、賃貸経営することを家族に提案しました。



――ご家族の反応はいかがでしたか。


 一般的に実家を継ぐのは長男ですから、まず一番上の兄に相談したところ

   兄は70歳を超えていますので、実家の建て替えや賃貸のことはすべて私に

   任せると言ってくれました。その後、家族全員、私が提案した家族信託を

   進めることで話がまとまりましたが、そうは言っても、私自身、信託に

   詳しいわけではありません。すぐに信託に関する書籍を何十冊も購入して

   勉強しました。そして、今年4月から専門家のサポートや金融機関の協力を

   得ながら家族信託に取り掛かっています。



――実際に家族信託を利用してみて、どんなことを感じましたか。


 信託の書籍を読んで、ある程度は理解したつもりでしたが、自分でやって

  みないと分からないことがたくさんあります。信託専用の口座が必要だったり、

  お金の管理にも細かいルールがあって手間がかかることも少なくありません。

  ただ、ここで信託のノウハウを身につけることができれば、今後、関与先の

  家族信託をサポートすることができるようになりますので、この機会を十分に

  活かしていきたいと思っています。また、家族信託を提案したことで、母親も

  含めて全員で実家をどうするか話し合うことができたのは良かったですね。



――相続対策を考えるキッカケになったわけですね。


 はい。相続の発生後、仲が良かった兄弟が財産をめぐって揉めることは

  珍しくありません。遺言という対策もありますが、そこでも遺留分などの

  問題が生じてきます。やはり、親が生きているうちに家族で相続について

  話し合い、全員が納得した対策を打つことが理想だと思います。もちろん、

  家族信託によってすべての問題が解決できるわけはありませんが、円満な相続を

  実現させる方法として、家族信託という選択肢があることを知ってもらうことが

  重要だと思います。そして、関与先が家族信託を選択した時には、税理士が

  家族の中に入って行司の役割をしてあげるべきだと考えます。



――税理士も家族信託の知識を身につけたほうがいいと思われますか。


 基本的なところは押さえておくべきだと思います。というのも、私自身も

  経験したことがありますが、税理士が信託も含めて相続全般の相談窓口として

  もっとアピールしないと、お客様が信託銀行や証券会社の相続のコマーシャルを見て、

  そちらに行ってしまいます。そして、税理士が知らないうちに相続対策がまとまり、

  中には相続税の申告までほかの税理士が担当することが決まっているケースもあります。

  それが悪いわけではありませんが、長年お付き合いしてきたお客様が相続で

   悩んでいるのであれば、まずは税理士に声をかけてほしいじゃないですか。

   とはいえ、相続案件は税理士一人では対応できないことも多々ありますので、

   外部のネットワークを上手く活用していくことがポイントだと思います。

   特に、2025年には認知症の方が5人に1人になると見込まれていますので、

   早めのアドバイスが求められてきます。


――認知症になってしまえば相続対策も限られてきますね。


 私の母は93歳でしっかりしていますが、家族信託を始める前に認知症になっていたら、

   今の相続対策は行うことができませんでした。認知症になれば、実家を処分するだけでも

   大変な時間と労力がかかってきます。お客様の中で80歳を超える方がいたら、税理士側から

   積極的に生前対策の重要性を伝えることが大事だと思います。



――吉田先生の家族信託も上手くいくと良いですね。


 理想としては、1年間でアパートを建てて、母親に100歳まで長生きしてもらえば、

  6年間くらい家賃収入が入りますので、兄たちに配分したり、相続税の納税資金を

  準備することができます。もちろん先のことは分かりませんが、家族全員がハッピーに

  なるために家族信託を選択したわけですから、受託者として頑張っていきたいと思います。



――最後にメッセージをお願いします。


  私の家族信託はまだ始まったばかりですが、これから多くのことを経験していくと

   思いますので、分かりやすい言葉で皆さんに情報発信できればと考えています。

   近年、認知症の問題や空き家問題などがクローズアップされていますが、

   家族信託はまさに時代にマッチした解決策です。ぜひ、多くの税理士の方に

   家族信託の理解を深めていただき、関与先のご支援につなげてほしいと思います。

 

 

 

「チャレンジ&イノベーション!」(今年のテーマ)

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