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2020年5月20日 (水)

起業家の勇気 その3

物語の主人公は、この宇野康秀さんなのですが、

実はその父親である宇野元忠氏の記述が非常に面白い。

 

いろいろ波乱万丈の起業家ですね。

ではその宇野元忠氏。

1935年(昭和10年)生まれ。国籍は中国(台湾)。

この方は優秀だったのです。

なんと、大阪大学経済学部卒。

脱サラして1961年(昭和36年)、26歳の時に大阪ミナミで

「大阪有線」を設立し起業します。

 

時代背景は、池田隼人首相が「所得倍増」を掲げるくらい

日本全体で景気の良い時代に突入していたのですね。

 

この本で「有線放送」という商売が良く分かりましたが、

このビジネスご存じでしょうか?

 

この頃日本で「有線放送」というビジネスが生まれたのです。

当時は「レコードを聞く」という文化が、日本に今以上に

根付いていたのですね。

今のNHK朝ドラではないですが、古賀メロディーが大ヒット。

美空ひばりや石原裕次郎という昭和の大スターが生まれたのも

この頃でしたからね。

 

有線放送とは朝の9時から深夜の1時までレコードブースでレコードを

流し続けるサービスなのです。

ただ今と違って、インターネットも、それこそ無線もない時代です。

それをまさに「有線」で、つまり有線放送用の線(スピーカー線)を

飲み屋街などのお店につなげなければならなかったのですね。

その線を電柱などに実際に這わせるのです。

でも実に原始的ですね。

 

「電柱の使用料を払わないで、夜陰にまぎれて盛り場の電柱に

よじ登り、有線放送のためのケーブル線を引く」

 

ということが日常だったそうです。

今から見たら「これ違法?」そう思いますよね。

当然警官に注意されたこともあったそうですが、

戦後のどさくさのおおらかな時代だったのですね。

 

契約は一か月1500円。コーヒー一杯が500円の時代ですから、

今の貨幣価値なら10倍以上でしょうか。

それでも嘘のように契約が取れたそうです。

一か月で100件は軽く取れたというのですね。

当時のレコードの値段を調べましたが、

EP300円、LP2000円です。

レコード自体も結構高かったのですね。

ですからヒット曲EP5枚の値段で、「聞き放題」ですから

安いと思われたのでしょう。

 

ここで「一か月で定額サービス」と聞くと、

今でいう「サブスク」ですね。

そうなのですね。まさに「元祖ベンチャー」だったのです。

しかし、

 

「有線放送の線を這わせるために道頓堀川を泳ぎ、

深夜に飲み屋街の屋根から屋根を伝うこと」

 

 

というのは、どう見ても「違法」でうさんくさいですね。

しかも儲かります。ということはこれは暴力団の資金源にもなったそうで、

ということは一般の方はやらなかったらしいです。

 

しかし、元忠氏は超ワンマン経営者だったのです。

この違法なまま、しかも当然それを知ってながら、

日本全国に営業所を拡大して売上を急拡大させていきます・・・。

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