破綻―「バイオ企業・林原の真実」林原靖著 その10
林原のメセナ活動で、有名なのは世界的ヴァイオリニストの
「五嶋みどり」さんへの資金提供。
これを説明しなくてはいけませんね。
まずヴァイオリンの「知ったかぶりの」うんちくから。
ヴァイオリンの二大楽器でよく知られるのが、ストラティヴァリとガルネリ。
ともに1700年代の特定の期間のみに作られ、
現存するヴァイオリンは、全世界に216本と145本しかありません。
当然世界で一番高価な楽器です。
値段などなってあってないようなもの。数億するものもザラです。
林原が、その五嶋みどりさんに、ストラティヴァリ「ジュピター」を
終身貸与したのが、みどりさんが20歳のときの1992年。
まさにバブルのピーク時。
報道では購入額5億円とも報じられていました。
実はこのジュピターのことが非常に気になって、五嶋みどりさんの
お母様の五嶋節さんが書かれた「母と神童」を読んでしまいました。
節さんはみどりさんと弟の龍さんの二人の世界的ヴァイオリニストを
女手一人で育て上げた有名人。
この本も、「子供に楽器をやらせたい方のバイブル」、名著です。
それには当時350万ドルもしたと書かれていました。
終身貸与した経緯も気になったのですが、実は節さんと
林原健社長の奥さんの由佳さんが、相愛女子大時代の
同級生だったのですね。
由佳さんはそのヴァイオリン科を中退し、
健社長と結婚する直前までヴァイオリニストを本格的に
目指したくらいの方だったのです。
ただ在学中は節さんとまったく面識なく、
五嶋みどりさんが有名になってから、
楽屋に押しかけてまでして、知り合ったそうです。
林原健社長は慶応の高校大学をずっと空手に打ちこんでいたほどですから、
音楽に関してはまったくの門外漢。
そのジュピターが売りに出されるのを奥さんが聞いて、その物を確かめず、
日本から林原の資金で送金したそうですね。
(実際は財団のカネとしてだった・・・)
ここまで読んで考えさせられました。
「これがメセナ活動か・・・・?」
単に奥さんの趣味のためにカネを出しただけではないのか・・・。
音楽好きの方には怒られてしまいますが、
奥さんの趣味というか、「道楽」で会社の資金を提供していたのです。
相撲でいう「タニマチ」と同じですね。
ついでにいうと、節さんのお父様が空手師範。
その後は家族ぐるみのお付き合いになったそうです。
(みどりさんの弟の龍さんも、世界的なヴァイオリニストで
ありながら空手の全米ジュニアチャンピオン)
一方で「終身貸与」というのも気になりました。
税法でいうところの「ある時払いの催促なし」。
これはまさに「贈与」なのです。
よく国税局は黙っていなかったですね。
ただこの時に贈与しておけば良かったのですね。
(海外だから贈与税はあげた人にかかる・・これは難しいのでまた・・)
その後、このヴァイオリンは林原破たん後に、
どうなったか非常に気になりました。
「ヴァイオリンを売ってでも借金返済すべし」という声もあったようですが、
新スポンサーの長瀬産業に財団ごと引き継がれたようです。
でも結局・・・。
五嶋節さんのブログで分かりました。
長瀬産業は売却してしまったのですね。こちら
「メセナ活動」の哀れな結末です・・・・。
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