400万企業が哭いている (石塚健司著) その5
ではここで、もう一人の「被害者」をご紹介しましょう。
衣料品の製造卸売会社、エス・オーインクの社長朝倉亨氏(47歳)
この方は、粉飾をしたことにより、「懲役2年の実刑判決」を
受けてしまいました・・。
朝倉氏は33歳で9年間勤めた衣料品メーカーを脱サラし、
平成10年、エス・オーインクを設立し、夢の一歩を踏み出します。
まさにゼロからのスタート。
最初は西新宿の雑居ビルに会社を構えますが、いつかは渋谷のメインストリートに
城を構えようという夢を抱いていました。
ここを聞いただけで私はもう泣けてきます・・・。
私も平成10年脱サラし、ゼロから会計事務所をスタートしたのですから。
いうなら私と同級生ですね。
朝倉氏は最初は他社ブランドの製造を請け負う「OEM」から
始めましたが、設立4年目に「オリジナル・ブランド」を立ち上げ、
早くも勝負に出ます。
それはアパレル業者なら誰でも思う夢の一つです。
その後、平成17、18年と、あいついでブランドの立ち上げ。
平成18年の決算は売上7億9000万。経常利益は1400万に。
その頃まで、会社は急成長したようです。
本社を早くも渋谷の南平台に移し、社員と契約スタッフ40名。
代官山の直営店舗、秋田県などに縫製の自社工場まで・・・。
銀行から「借りてくれませんか」の営業で
債務高3億3000万に膨らみました。
ただ、ちょっと借りすぎですね。
しかし、サブプライム問題からリーマンショックにつながって
一気に景気は冷え込み、業績が悪化。
ほぼ同時期に、銀行とのリスケ交渉。
リスケとは「返済を少しまってくれ・・・」ということなのですね。
リスケを交渉したとたんに、銀行は手のひらを返します。
もう露骨な「貸し剥がし」を受けます。
しかも、銀行にこうも言われます。
「次の決算は大事ですよ・・・」
銀行の状況は、いままでご紹介した通りです。
「赤字では貸せませんよ」
ということなのです。
これが金融庁の「ご指導」ですから・・・。
ここで問題の平成19年の決算を迎えます。
売上高は8億8200万だったのが、これに2400万の「ゲタをはかせ」
仕入高の数字を2000万減らした・・・。
ついに粉飾に手を染めたのですね。
実際に逮捕起訴されたのは、この時の粉飾ではないのですが、
この粉飾から、すべてがスタートしたのだと思うのです・・・。
« 400万企業が哭いている (石塚健司著) その4 | トップページ | 400万企業が哭いている (石塚健司著) その6 »
« 400万企業が哭いている (石塚健司著) その4 | トップページ | 400万企業が哭いている (石塚健司著) その6 »
コメント