私の独立開業日記 その17
業界の禁じ手
多分同業者が一番知りたいお話をしましょう。
一般の事業では、独立開業で多いケースは、自分の担当したお客さんに
声をかけて独立後自分のお客さんにする場合ですね。
実際に、建設業や広告代理業、美容室などで
多くそういうケースの開業のご相談を受けてきました。
一番手っ取り早い独立法でしょう。
こういう業界ではいわゆる「仁義なき戦い」が実際にはあります。
でもこの税理士の業界では、その基本法典である「税理士法」により
それが禁じられているのです。通常の業界がうらやましい限りです・・・。
今だからいえるお話をしましょうか。
実は前の担当先にも一応挨拶状を出してあったので、
何人から電話が掛かってきました。「どうして辞めたの?」と。
でも優等生的な会話で、
「自分の身勝手を許してください。今まで通り先生をよろしくお願いします。」
と言って電話を切りました。
本当は頭を下げてもついて来て欲しい。そう心の中では叫んでいたのです。
これは本心でした。
この税理士法というありがたい法律により、顧客の奪い合いは好ましくないと
されているのです。
それどころか、独立して顧問先を何件か取っていったことで
問題になったという話をよく聞きます。
何より、こちらは税理士の登録申請中の身です。
そんなことで問題を起こして税理士になれなかったら、
それこそ単なる失業者になってしまいます・・・。
一番親しくつき合いも長かった担当先の社長が、
この苦しかった開業2ヶ月目に、突然様子を見に来ました。
正直これは当方に乗り換える腹かと内心期待していました。
食事をしながら、その社長はこう言いました。
その時の言葉が忘れられません。
「確かにキミの能力や仕事ぶりは買っている。是非キミについて行きたい。
しかし本音を言えば、キミが駆け出しの税理士であることはやはり不安だ。
1年後やはりダメでしたと急に廃業されても困るし、
あと、やはり今の先生のことが気になる。
強引にキミに変えて何か問題でもなればもっと困るし・・・。」
このときばかりは、少なからずショックでしたけど、
今こうして思ってみると、そういう本音をいってくれる方がいて
よかったのだと思います。
安易な方法で客を作ろうとしないこと。
これは強い税理士を育てる最低限のルールなのだと思います。
開業2ヶ月目。ついに売上はゼロでした。後にも先にももちろんありません。
飲食店で言う「おけら」です。
でもそれが自分の「原点」だと思っています。
その経験があるから今がある。本当に思います。
(渾身の独立開業日記 まだまだつづく・・・)
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