かばんの真実 その8
この時兄弟間で話し合いがされました。
その結果、長男ではなく、実家の近くに住んでいた三男の信三郎氏が
せっかく9年間も勤めた朝日新聞を退職して、
家業を手伝うことになったのです。
長男信太郎氏は、後にこう言っています。
「父としては、家督は長男が継ぐものと考えていましたから、
私が実家に戻るのが自然な流れであったかもしれません。
私もいつかは京都に戻って、一澤帆布を継ぐことになるだろうと
思っていました。
父は当主は長男の私で、普段の経営は信三郎にやらせておけばよい
と考えたのでしょう。」
そう本当に言ったのかもしれませんが、
私は何となく都合のよい解釈のような気がしています。
長男の方が銀行をここで辞める気があったかどうかは分かりません。
ただ、ここでも大事なことは、「家督相続」の考えを長男は
述べていることです。
一方で、信夫氏の弟の恒三郎氏(つまり叔父さん)は
「長男信太郎氏は銀行で出世し家業には興味がなかった・・。」
こういう証言もあります。
確かに長男は銀行で支店長まで出世し、その後定年まで勤め上げています。
ただこの時点が私は事業承継の大事なポイントであったと思うのです。
ここで明確な事業承継がされていれば、その後の悲劇は起こらなかったはずです。
いろいろ書いてきましたが
「一家庭のあれこれを面白おかしく詮索する」
そこらの芸能レポーターの
ワイドショー的なお話になってきたような気がしてきたので、
専門家としての正しい「突っ込み」を入れていきましょう。
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